〝飛び〟の良さと矢羽根の美しさで、全国の弓道家に知られる八女矢。一七五二年(宝暦二年)、藩のお抱え矢師が、弓づくりに向く「篠竹」が豊富な八女の地に居を移したのが八女矢の始まりと伝えられている。

 現在、福岡に七人しか居ない矢師の一人、相良亘祉さんの家系も、もとは熊本・人吉で宝暦八年頃から矢を作っていたという。当時の矢は戦に使う武器としての矢であったが、現代の世で八女矢は姿と用途を変え、精巧な弓道用の矢として、また魔除けや健やかな成長を願う飾り矢として親しまれるようになった。

 矢づくりの要は、「粗矯め」と呼ばれる、竹をまっすぐに伸ばす工程。「ここでしっかり伸ばしておかないと、後で元に戻ってしまう」

 人生どんなことがあっても、まっすぐに歩んでほしい。時間をかけ繰り返し矯めてゆく背中から、そんな願いが聞こえてきた。
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